(R3.1.28)第1回特別セミナー
「児童虐待対応担当者支援」研修会 講師インタビュー

ストップ虐待!  

―子どもたちを虐待から守るためにー

 

     坂 口  明 夫さん  社会福祉法人 甘木学園理事
子ども家庭福祉センターあまぎやまセンター長
児童養護施設 甘木山学園支援部長
NPO法人ポピンズ理事

 

 

 

Q. 虐待防止への取り組みを始められたきっかけは?

私自身、本当の両親に会ったことはなく、七つの里親の家庭を転々とし、虐待を受けた経験もあります。高校三年の時、甘木学園で同じ境遇の子どもたちと出会い、この子どもたちの為の制度や環境を自分が変えなきゃいけないと感じたことがきっかけです。自分の親とはキャッチボールをしたことはないけれど、親友のお父さんとキャッチボールをしたことは鮮明に覚えていて、親子ってこういうものなんだとモデルを学びました。また、理不尽に叱られ家出をした時に乗ったバスの運転士さんに「ぼうず、うどんでも食うか」と何も聞かずに一緒に食べてくれたり、人生の節目には誰かがいてくれました。色んな人との関わりの中にご縁があると思います。

Q. 現在どういう取り組みをされていますか?

大牟田市の子ども家庭支援センター「あまぎやま」のセンター、「NPO法人ポピンズくまもと」を立ち上げ、子どもと家族に対して相談や支援にかんする事業などを行っています。新型コロナウィルスの影響による小中学校に休校の期間中、大牟田市の特に見守りが必要な子に対して、二千食を超えるパンや弁当を準備し届けました。教師がパンを持って家庭訪問をしたり、学校に来た子には弁当を食べるついでに一緒に勉強するなど、不登校だった子が学校へ向かうきっかけとなりました。

Q. 具体的に虐待とは?

虐待の定義は四つあり、1.身体的虐待 2.ネグレクト(育児放棄)3.性的虐待 4.心理的虐待 などがあります。その中でもネグレクトが一番深刻です。子どもたちは、親子関係の中で、三度の食事をとること、帰ってきたら手を洗う、毎日お風呂にはいるなどの生きる術を学びます。しかし、教えてもらっていないとその育ちを奪われます。

Q. 躾と体罰の分かれ目は?

境目はないと思います。体罰がいけないということを頭に入れて、それに代わるものを模索し続けるしかないと思います。一生懸命さがゆえに手を出してしまうことがあると思いますので、追い詰めるのではなく、フォローすることが必要です。

Q. 子ども達との関係作りで大事にしていることは?

一番は食事です。甘木学園では、子ども達が入所する時には、その子の好きな食べ物を聞くようにしています。それを夕食に出して皆でワイワイ食べることで、自分が大事にされていると実感出来ます。家庭でお母さんが忙しくても「レンジでチンしてたべてね」という置手紙があるだけでも、自分のことを忘れていないという想いが伝わることが大事だと思います。

Q. 虐待かなと思ったらどうしたらいいですか?

伝える時には責任がいるので、まずはその家庭の状況に関心を持ってみてください。何曜日の何時頃に泣いているかなど、泣き声のパターンなどを記録し、それをもとに市役所の相談窓口や民生委員さんなどに相談してみてください。

Q. 虐待を防止するためには?

親同士が確かに繋がれる仲の良い親友を作ることが一番の予防で、子育てを協力しあう、『子育てのたすき掛け』が出来ます。昔からあった地域の祭りなどは、顔見知りになる為にもあったと思います。今はネットの情報もありますが、もっと身近な所で、子育ての悩みを言える人との関係性が出来るといいと思います。

Q. 私たちが出来ることは何ですか?

挨拶というきっかけから、話を聞いてうなずける人が地域にたくさんいて欲しいと思います。家族の関係性支援が必要なので、子育てをしている人(お母さん、お父さん)を支える身近な人の応援をすることも大事です。近所の人と雑談するだけでも、話をきいてくれる人がいると感じられ、一人ではないと思えるのです。

(玉名市子育てネットワーク広報誌より転載)