総   括

 平成29年度から急遽実施された「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善」(処遇改善Ⅱ)により、現場では、研修や手当の配分について大きな混乱が生じました。 
そのような状況の中、熊本子育てネットが毎年開催して来た「カウンセリング研修」、「スキルアップ研修」、「子育てコーディネーター養成講座」がそれぞれキャリアアップ研修として熊本県に認定されました。「カウンセリング研修」は「保護者支援・子育て支援」分野、「スキルアップ研修」は「障害児保育」分野、「子育てコーディネーター養成講座」は「マネジメント」の分野に、三本柱として実施してきた研修が全て認定されたのです。また、熊本子育てネットが、キャリアアップの研修団体として熊本県に最初に認定されたことからも、本協議会が実施する研修の質の高さと研修実績の厚みを実感した年となりました。
一年を振り返ると、4月の総会でお招きした苫野一徳先生(熊本大学教育学部准教授)の講演『子育てをやさしく哲学する』では、物事の本質を捉える哲学的な視点から、人類の歴史を生きる一人の人間として民主主義や教育の歴史を踏まえたスケールの大きな学びができました。
子育てネットの研修主力である杉田峰康先生(福岡大学名誉教授)のカウンセリング研修では、交流分析を通して対象である保護者を、また、参加者が参加者自身を深く見つめ直すことで、これからもより良い生涯を生きることができる可能性を見出すことができました。
山田眞理子先生(子どもと保育研究所・ぷろほ所長) の子育て支援スキルアップセミナーでは、現代社会の子育て環境を踏まえて乳幼児の発達や障害児の特性を丁寧に学び直し、子どもの気持ちに寄添う大切さを学びました。
吉田道雄先生(熊本大学名誉教授)の子育てコーディネーター養成講座では、他者との関係から自分を見つめ直し、リーダーシップについての学びを深めました。
また、平成29年10月26日から27日に開催された第8回子ども子育て支援全国研修大会2017 in 山口では「熊本地震における子育て支援事業の効果に関する調査研究事業」の結果が発表され、ライフラインとしての子育て支援センターや保育士が果たした役割の重要性に光が当てられました。
参加者は、それぞれの研修会で学んだ内容を、自分自身の事として、深い自己洞察を行いながら自己研鑽に励むことができたと思います。
平成30年度から保育所保育指針や幼保連携型認定こども園教育・保育要領が改訂されるにあたり、『子ども主体』ということがより明確に打ち出され、それぞれの指針・要領第4章に『子育て(の)支援』が章立てられました。『子育て支援』が専門性のある重要な仕事だと位置づけられてのことでしょう。
私たち『子育て支援』に携わる者は、確かな子どもたちの育ちのために、常に自己変革を意識しながら自らの学びを深める必要があります。また、平成29年度、キャリアアップ研修の認定を三分野受けることができたということを踏まえると、熊本子育てネットは、地域の子育て支援力を高める研修団体としての役割が、より大きくなってきていると考えます。
(文責:嵯峨 淳心)