報告書
平成22年度 食育研修(Ⅲ)

 

熊本県立大学 環境共生学部 食健康科学科 2年
今給黎綾乃 桐原智美 坂本日名子

 

講 師:
南 智子氏 (大分県東八幡保育園 保育士)
テーマ:
絵本から飛び出たおやつ~子どもの夢を叶えよう!~
「楽しみながら、好きなものが増える子どもたちへ」
実施日:
平成22年8月28日(土)
参加者:
保育園 園長、保育士、管理栄養士、栄養士、調理師、大学教授 学生
日程:
14:00 開始
  • 講演会・・・保育園での食育活動について
  • 休憩
  • 講演会・・・「絵本から飛び出たおやつ」の紹介
16:00 終了

【講演内容】

今回の研修会では、保育園での食育についての考えと実際の活動についてのお話を伺った。食育に関して保育園での期間は、これからの食生活さらには人生にとって大切な時期である。好きなものを好きな時に好きなだけ食べられる、飽食時代に生きる子どもたちの背景にはたくさんの危険が潜んでいる。エネルギー量の摂りすぎ、脂肪の過剰摂取、野菜不足による肥満、食アレルギー、アトピー、糖尿病、高血圧などの病気にかかり易くなると言われている。また、精神面的にも影響を及ぼし、引きこもる、キレる、暴れるなどの世間を騒がせる行動につながる。

離乳食期は味覚の習得に関与する重要な時期である。乳栄養から食べ物栄養に変わる準備段階なので、この時期の成長にあった食べ物、大きさ、固さで様々な食べ物の経験をさせ、食べ物本来の味をインプットさせてあげたいものだ。好きな食べ物の枠を初めから広くしてあげ、自然のもの、安全なものを選択できる力を養うために、味付けは出来るだけ自然のダシ、食材の旨味だけで、食べ物本来の美味しさのもの食べさせてあげる必要がある。またこの時期の注意点として、周囲の大人たちは赤ちゃんが食べてくれるものを与え、食べないものは避けがちである。このような状態は、子どもの偏食につながる可能性がある。子どものころに身に付いた生活習慣は大人になっても継続し、変えるのは難しい。つまり、子どもの早いうちに望ましい食習慣を身につけさせる必要がある。保育園での給食の場は、最適な場所と時期で、全部食べてからお替りをするなど自然に決まりごとができてくる。また、実際の経験から同じ料理でも家では食べないのに保育園ではお替りまでしておいしく食べる子どもたちも多いらしい。これは、保育園の給食は調味料が少なく、薄味でたくさんの食材の旨味がたっぷりなので子どもたちがおいしいと思えるやさしい味付けのためであるそうだ。

保育園での食育の目的は①身体にとっていいものを自然に選べる力をつけさせてあげる、②素敵な大人に成長する“こころ”をもたせてあげること。そこで、良い事も悪い事もありのまま、全て吸収する純粋な子どもたちに周囲の大人はどのような働きかけをしてあげればいいのか。子どもたちは何かに取り組むとき、大人が思っている以上に頑張っているものである。ときに、「がんばれ」という応援の言葉は子どもたちにプレッシャーをかけてしまい、負担になってしまっている。だから、大人は子供たちが「がんばりたい」と思えるように、積極的に子どもたちと楽しい事をし、子どもたちの大好きな人になって、「いっぱい食べられたね~、すごいね~」などたくさん褒めて、子どもたちのやる気を引き出す言葉かけや行動を意識することが大事になるようだ。

このような考えから、今回の講師である南先生が働く保育園では次のような取り組みがされていた。ひとつは『ピカピカ大作戦』。飽食の時代、物の大切さや、食事を作ってくれる人への感謝の気持ちも希薄なっているという考えから、物の大切さや物を粗末にしないもったいない精神を伝える取り組みである。ここでは、子どもたちが自分のお皿に入っているものは全部食べきることを目標とし、嫌いなものや好きなものをしっかりと把握し、食べきれないものは事前に減らしてあげるなどの工夫も大切らしい。この取り組みの成果として、子どもたちが全部残さずに食べきる喜びを感じるようになり、それでも食べきれない子どもには、しっかりと向き合って食べきれるように努力しているとのことだった。

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実際に読み聞かせを行った絵本
『ぐるんぱんようちえん』
作:西内 ミナミ(福音館)

 

また、二つ目の取り組みは『絵本から飛び出たおやつ』で、夢を叶える、食事に夢をもつ、想像力を豊かにすることを目的としている。この活動は、毎月1回行われ、お昼寝前に調理員が絵本の読み聞かせを行い、その絵本の中に出てくるおやつが今日のおやつになるという、とてもワクワクする活動だった。この日も、実際にひとつの絵本の読み聞かせを経験し、休憩時には南先生が作って持って来ていただいた絵本に出てくる大きな、大きなビスケットを参加者全員で試食し、ピカピカ大作戦を行った。保育園では、子どもたちだけでなく、保育士の先生方や調理員の方たちも毎月1回のこの日をとても楽しみにしているようで、この取り組みを通して、とてもいい関係がきづかれているように感じた。

CIMG0716.JPG南先生とぐるんぱのビスケット
 
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試食☆
CIMG0719.JPGピカピカ大作戦 大成功!


 

【感想】

現役で働いている保育士の方の保育園での食育の取り組みのお話は、世間での食育の認識の広がりを実感させてくれた。自分たちが保育園に通っているときには、耳にもしなかったし、体験したこともなかった食育活動が現在では多くの保育園や家庭で関心がもたれていることは大学では感じることができないので、とても新鮮だった。栄養面のことだけではなく、対象となる子どもたちのことを考えた、楽しい食育活動は保育士の方ならではの考えや工夫にあふれていた。自分たちが保育園児のときにも体験したかったな、きっと保育園の子どもたちは嬉しいし、楽しいだろうなと本当に心から思った。また、食育は対象であるヒトを思ってこそ成り立つということを改めて学ばせていただいた。

人生の先輩として南先生にとても感銘を受けた。保育園での食育についての新しい取り組みを考えたり、実際に実行するという積極的な姿勢や、自らも楽しんで活動する姿勢はとても魅力的で感心した。自分たちも日ごろの勉教や取り組みで見習いたいと思ったし、大学を卒業し、就職してからも南先生のように何事にも積極的に打ち込みたいと思った。

今回の子育て支援の研修会に参加して、保育園を通しての世間での食育活動に触れることができ、社会人の先輩の仕事に対する熱心な姿勢を学ぶことができ、とても貴重な経験になった。これからの自分たちの活動や行動に確実に反映していきたいと思う。